5面・強化1ボスと対等に戦えるようになった頃には、もう夢中だった。 出会う敵全てが手強く、何度となく叩き潰された。 強化2ボス、スレイヤー、ブラックハート1&2、6面冒頭からスクロールストップ地帯、道中全てと6ボス、 そしてラスボス... どれもがあまりに恐ろしく、それでも全力で立ち向かい続けた。 負ける程にクリアへの想いが焦がれ、その想いが高まる程に一層敗北感を叩き付けられる。 だからこそ逆に、それを乗り越えた自分が、どの場面一つをとってもたまらなく誇らしく思えた。 ほんの1画面進むだけでも嬉しくてたまらなかったし、コインを入れるのが楽しくてしかたがなかった。 もう1年以上も経つ96年夏、4号機時間切れ機体によるラスボス戦最終段階、 直前に800万点でエクステンドした自機も荒れ狂う敵に破壊され、 残機もなくボムも撃ち尽くしたあの瞬間、ついに砕け散ったラスボス。 一瞬の静寂、そして飛び立つ自機のプロペラ音が勝利を告げた。 ネーミングの後、立ち上がろうとしても腰砕け(笑)で、決して誇張でなく足がガクガクと力が入らず、 しばらくろくに動けなかったのを今でもはっきりと覚えている。 やばいと思ったのは、強化2ボス戦の後に後ろから登場するスレイヤーと初めて対面したとき。 そのやばいってのは、もちろん難易度的な意味もあるけれど、それとは別にメンタル的なものについて。 それは理性が飛ぶというか、脳みその深層が捕まれるというか、 自分がこの作品に対してブレイクしていくのをもう抑える事が出来なくなった瞬間、とゆ〜か... この世界は確実に重力に支配されている。全ての航空機が飛行力学を意識した作りに成されており、 プロペラ等の推進機関の力で空に舞っている。大きさや重さや推進方式に対応した飛行速度や旋回能力、 及び装甲の厚さ(体力)や武装搭載量。全ての機体、航空機のみならず地上兵器も含めた全てのキャラクターが、 それらの物理的・現実的「理」に支配され、それを踏まえてデザインされている。 もっと細かな部品単位で見ても然り。徹底的にパーツを細分化し、 破壊判定も分け単純な本体ダメージ以外にも致命傷誘爆処理までほどこす。 特に砲台関係には全てその各砲台のタイプにより、能力を選り分ける。 弾速や連射能力、一度に連射出来る弾数、弾薬&エネルギーの注入・入れ替えにかかる時間、 砲身の回転速度、等々。 そして規格化されたそれらは汎用的に用いられる。 こういった極めてリアリティに富んだ世界創りが、 現実を生きている私達がその視点を同調出来、この現実の常識を被せる事が出来る。 そして、そういう視点でみると、各機体の「凄み」が更に彩りを増す。 ここには確実に世界が存在していて、そこには(おそらくは私達とそうは違いのない)住民達が住んでいる。 文明レベルは化石燃料内燃機関発生からまだ数十年、決して万能とは言えない、 今の私達から見ればまだ未熟とも言える技術力。 その中で人類は物を創り、生産し、そして私達が対面したあれらの機体を生み出していった。 現実的にその文明力であれらの生産は可能なのだろうか?考えれば考える程に、 その機体群の実現は困難に思えてならない。しかしガレッガの住民はそれを成し遂げている。 3面で見かける工場シーン、未だ開発途上にあるスレイヤーの面々。 この世界は私達の世界となんら変わらず、物を一から段階を経て作り上げていっている。 そんな一見当たり前のようで、ことゲームの世界ではなかなか認識し得ないこの概念、 それを目の当たりに出来る貴重な瞬間。 完成間近のそれらを見て、言いようのない不安、それと同時にその完成形を知りたいというほんの僅か期待、 そんなものを感じたのは、恐らく私だけではないと思う。 そして、あの巨体が宙に舞う瞬間に、現実として遭遇する。 それも、超高空にて敵軍が本気でプレイヤーを殺しにかかる、 恐らくは連邦軍最強航空戦闘隊であろうその一連の面々の、どうどう主力機として。 ある意味か弱い小型機1機でしかないプレイヤー、それを撃墜するが為に、 彼は雷雲上まで舞い上がり、追撃を開始する。 確実に彼は、プロペラ動力だけでその巨体を操り、大空を翔けている。 そして制空圏にターゲットを捉えると同時に大きく旋回し、ゆっくりと威圧的に襲い掛かり、 その機能美に富んだ数多の装備を次々に開放していく。 この瞬間が、私にはとても鮮烈であった。 そいつらを敵にまわしてしまった事への、背筋を震わす恐怖。 しかしそれは、自分が敵軍にとってその主力艦隊を向かわせなくてはならない程の、 危険な存在になっている事をも示す。脅威を一つづつ乗り越える度に、 その炎上する姿を見つめるとき、それが後方に消え更なる危険地帯に自らを委ねるとき、 いつも確かな手応えを感じていた。 連邦軍の多くの兵器は、プレイヤー自身であるウェイン兄弟が、軍を脱走する前にもともと創り上げた物。 それらは多く凄惨な悲しみを生み出してしまい、その罪を清算する為に、そしてそれらを封印するが為に彼らは戦う。 例え勝ってもそれは祝福されない事かもしれない。 でもやらなくてはならない、打ち砕かなくてはならない。悲痛で揺るぎ無い意志がそこにはある。 しかし、勝利への執着は決してウェイン兄弟だけではなく、むしろ連邦軍にこそ、かもしれない。 軍事発達という歪んだそれは、次第に狂気性を帯びながらもとどまる事を知らず、 生産された戦力全てが投入されていき、激突する意志に空気が焦がれる。 そして中枢部も破壊されラスボスが逃げに入り、物語は終焉を向かえようとするその瞬間、 灼熱の最終防衛ライン強化5ボスが立ち塞がり、消え際の最後の炎が燃え上がる。 狂おしいまでに激しい鋼の咆哮に、プレイヤーは抗う事すら叶わないかもしれない。 でも、進んできた道のりと倒して来た敵の存在が気力を支えてくれる。 時は収束し、喉は枯れ鼓動は速まり、呼吸は限りなく遅くなる。 ディスプレイ以外何も見えなくなったとき、物語はクライマックスを迎える。 バトルガレッガのテーマには、1つにはリアリティがあると思う。 これには先の話のような人工物の理もあるし、また「破壊」の追求もある。 作者は間違いなく爆発フェチであろう(笑)。 余談だが、私は飛び散る破片処理が極めて好き、である。 が、ここで私なりにもう1つテーマを感じるのが「自然〜空の高さと雲」である。 エンディングで夜明けの日差しの中、穏やかに空を飛ぶ自機。 そのまわりに広がる雲のなんと雄大な事か。 世界はかくも広く果てしなく、朝日はあまりにも眩しく。 作品中、このゲームは雲の存在をとても大事にしている事が良く分かる。 1面は雲よりも高い渓谷、2面は水面に写った遠く上空の雲 (恐らくはそれが5面との高度差をも表している)、 そして5面は言うに及ばず、6面の要塞も雲の高さを越えた高度に位置しており、 7面の最後の舞台も雲の中である。 ネーミングの背景にも注目。ちなみに3面・4面の地下世界にもちょっと注目。 冷静に考えると1面の渓谷や6面の要塞で、 雲よりも高く底の遥か霞む巨大な山岳地帯にまで開発の手を伸ばし、 そこに人工の文明を築いている人類の姿は、なかなか凄いものがある。 文明レベルを考えると尚更、人類のパワーたくましきという所。 ガレッガの住民にはどうも私は憧れてしまう。 そしてウェイン兄弟の機体はこの実に広大な世界を、 海面付近の低空から雷雲の上にわたる高空まで、プロペラ動力で翔け巡る。 プロペラ音で始まってプロペラ音で終わる本作品、見事な機動性を誇るその機体は、 ゲームスタートからエンディングまで、撃ち落とされない限り絶えず空を飛び続ける。 もちろんそれは場面転換の上手さがあるからこそではあるが、 プレイヤーはその翼の休まる瞬間を知らない。 果たしてウェイン兄弟は休まる事が出来たのだろうか? 恐らくは例え全てに勝利してもその罪は消えず、彼らの後悔もなくなる事はないのかもしれない。 いや、彼らの後悔がどんなものなのか、そしてどれほどのものなのか、 結局私は知らないし想像する事しか出来ない。 だからどうすれば癒されるのかも分からない。 けれど私達は、彼らのプロペラ機の軌跡は知っている。 それはあまりにも辛く困難で、絶望的ですらあった。 考えるほどに、かの連邦軍を前にして生き延びられるなんて到底思えない。 その力を知りながらそれに挑む事は、はなから愚かだったのかもしれない。 実際悲劇的結末で終わったストーリーは500回も1000回も越える程だったかもしれない。 しかしそれを越えて、朝日を浴びる結末に辿り付いたウェイン兄弟。 ある意味奇跡的な事ではある。 けれど、情熱と渇望の果てに掴み取ったそれは、決して奇跡でも幸運でもない。 そして、だからこそ価値がある。 一緒に舞い上がる鳥達は、果たして祝福してくれているのだろうか。 私はそうであると願いたい。その鳥達は決してボンバーであぶられて(笑)飛び立った訳ではない。 何故なら、もうこの機体に武器を積む必要はないのだから。 世界は美しい、陽射しを浴びた瞬間彼らはそう感じたんじゃないかな? 多分それを味わうような余裕は今まではなかったはず。でもこれからは違う。 これからは彼らは自由に、安息の日々を軽くなった翼で、思うがままに空を飛ぶ事が出来る。 ほんとに良かったと思う、もう目頭に来る位。 彼らは最後に空を手に入れる事が出来た。もうどこだって飛んでいける。 そして、これからもその世界の中で、ずっと飛び続けて欲しい。どうか彼らに安らぎの日々を。 ただ、その操縦席に乗っているのがもう自分でないのが、ほんのちょっぴりだけ残念だけど... P.S.このゲームを制作して下さったライジングスタッフの皆様に、心から感謝致します。 97.11.16 FUKU@海老隊 ※2016/12/13 WEB公開用に改行のみ調整